。。九月も半ばを過ぎると、。。。。。

。。フェアバンクスには。。。。。。。

。。晩秋の気配が漂ってくる。。。。。

。。太陽の沈まぬ光に満ちた。。。。。

。。夏は遠く去り、。。。。。。。。。

。。美しい秋色も色褪せた。。。。。。

。。が、それを悲しむにはまだ早い。。

。。来るべき冬を待ちながら。。。。。

。。風に舞う落葉を眺め、。。。。。。

。。カサカサと枯れ葉を踏みしめる。。。

。。不思議に穏やかな日々が。。。。。。

。。まだそこにある。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。満ち潮が押し寄せ、。。。。。。。。

。。再び引いてゆく前の、。。。。。。。

。。つかのまの。。。。。。。。。。。。

。。海の静けさのようなとき。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。人の一生にも。。。。。。。。。。。

。。そんな季節があるだろうか。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。約束の時間が過ぎ。。。。。。。。

。。あわてて家を飛び出ると。。。。。

。。冷えきった夜の帳につつまれた。。

。。シルエットに沈んだ。。。。。。。

。。トウヒの木々の間から。。。。。。

。。青白い炎が天空に向かって。。。。

。。揺らめいている。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。いつのまにこんなに早く。。。。。。

。。日が暮れていたのだろう。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。もうすぐ、長い夜が。。。。。。。。

。。支配する季節がやって来る。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。アラスカ大学を過ぎ。。。。。。。。

。。ファーマーズ通りに入ると。。。。。

。。オーロラはすでに。。。。。。。。。

。。北の空に広がっていた。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。この光はきっと強くなり。。。。。。

。。やがて全天に舞い散るだろう。。。。

。。冬の到来をきっぱりと告げる。。。。

。。九月のオーロラ。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。ゆっくりと眺めていたいが。。。。。

。。今夜はシリアとジニーが。。。。。

。。待っている。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。アラスカのひとつの時代を。。。。

。。生きたこの二人から。。。。。。

。。この土地を吹き抜けた。。。。。

。。古い物語を聞き始めてゆく。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。色褪せたアルバムの。。。。。。。

。。ページをめくり、。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。過ぎ去った時を。。。。。。。。。

。。もう一度旅することが。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。できたなら。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

星野道夫

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。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。横浜スタジアムから。。。。。。。。

。。県庁に向って。。。。。。。。。。。

。。イチョウ並木がある。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。今の時期には。。。。。。。。。。

。。イチョウが色鮮やかに。。。。。。

。。紅葉して。。。。。。。。。。。。

。。晴れた日には。。。。。。。。。。

。。イチョウの黄が。。。。。。。。。

。。目に突き刺さるように。。。。。。

。。感じられる。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。横浜という街と。。。。。。。

。。僕の相性はいいような。。。。

。。気がする。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。学生時代を。。。。。。。。。

。。神戸で過ごした。。。。。。。

。。こともあるかも。。。。。。。。

。。しれない。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。港町というのは。。。。。。。

。。何かしら独特の雰囲気を。。。。

。。持っているのだろう。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。東京や大阪で。。。。。。。。

。。しばらく勤めた。。。。。。。

。。経験もあるけど。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。人、車、ビル、音、など。。。

。。どれをとっても。。。。。。。

。。過剰な刺激は。。。。。。。。

。。感性を微妙に。。。。。。。。

。。曇らせる力が。。。。。。。。

。。あるようだ。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。木々が刻々と。。。。。。。。

。。色を変えたり。。。。。。。

。。落ち葉となって。。。。。。。

。。空を舞うとき。。。。。。。。

。。いったいどれぐらいの。。。。。

。。人がそのことのために。。。。

。。足を立ち止めて。。。。。。。

。。いるのだろう。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。「やること」を。。。。。。。。

。。たくさん背負った人は。。。。

。。目の前に起きている。。。。。

。。自然の営みにさえ。。。。。。

。。気づかずに。。。。。。。。。

。。ただ「やること」のために。。

。。時間をついやす。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。

。。もしも。。。。。。。。。。

。。僕がある風景の。。。。。。

。。一部になるとしたなら。。。

。。どんな風景に。。。。。。。

。。なるのだろう。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。アナーバーの冬は。。。。。。

。。とても厳しかった。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。氷点下20℃になり。。。。。。

。。外は雪と氷の世界という。。。。

。。日々が何日も続いた。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。そんな時。。。。。。。。。。

。。僕はたった一人。。。。。。。。

。。しんと静まり返った。。。。。。

。。部屋の中で。。。。。。。。。。

。。祈るように。。。。。。。。。

。。本を読んでいた。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。不思議と寂しさはなく。。。。

。。僕自身と外界が。。。。。。。

。。目に見えない扉を通じて。。。

。。深く深く。。。。。。。。。。

。。結ばれている気がした。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。

。。季節が夏から秋。。。。。。。

。。秋から冬にむかうにつれ。。。

。。心のベクトルは。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。

。。外から内へと。。。。。。。

。。変わっていく。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。

。。人は一生のうちで。。。。。

。。自分自身に出会う瞬間。。。

。。を持つことが出来るのは。。。

。。。。。。。。。。。。。。。

。。そう多くないのかも。。。

。。しれない。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。




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