どこかからぼわっときもちがわいてきた

すきとおっていたむねのなかを

だれかがぬりつぶしたみたい

みんながこうていをはしりまわっているのに

ぼくのこころはじっとしている

きもちはあとからついてきた

ことばはなにかいった

ぼくはちがうちがうとおもった

そのときこうちゃんが

どしんとぼくのせなかにぶつかった

きもちのいろがぱっとかわった

こころがぼくよりさきに

こうちゃんをはしっておいかけた

ことばはおいてけぼりだ

もうことばはきもちにおいつけない

ぼくはこうちゃんにたいあたりした

ふたりともじめんにころがった

あぶらかだぶらあ!





  - 谷川俊太郎


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目の前で
何かが起きると
それを見ている

自分の中で
何かが起きる

僕の中に
幾重にも
フィルターが
あって

そこを
通過するときに
電流が
おきる


日によって
場所によって
フィルターの数や
フィルターの質が
変化する


年を重ねると
フィルターの数が
増えていったり
曇ってしまったり
するから
ときどき
お掃除を
してあげる


いろいろな
お掃除の
方法が
あるけれど


僕の好きな
方法の1つに
波乗りが
ある


上手く
波に乗れなくても
大丈夫


沖からゆったりと
押し寄せてくる
波に
全てを
ゆだねる
だけでいい


ゆらゆら
ふわふわ

波間に
浮かぶ


ぷかぷか
ほわほわ

波間に
浮かぶ


そのうち

フィルターの
あみめに つまっていた

考えの
かすが


ゆっくりと
溶け出して


沖に
はこばれて
いく

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