高度成長の過程で
住宅街にも
「都市の論理」が
行きわたるようになる
人間関係は希薄になった
マックス・ウェーバーが
いうように都市は人間を
自由にするが
それとひきかえに
人間は「孤独」になった





   - 鷲巣力




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品川駅の近くで
仕事があった時
昼休み駅前のコンビニで
買い物をした

駅前というだけあって
その時間は周囲の
ビジネスマンやOLの
人たちで
ごったがえしていた

レジでPOSに
リズムよく商品を
とおし
ぴっ ぴっ という音と
共に
金額が現れ
その金額を
来客は支払っていく

誠に効率的な光景で
さながら
チャップリンの
モダンタイムスを
見ているようだ

僕は
ペットボトル入りのお茶
を買って
袋に入れてもらわずに
シールを貼ってもらい
外に出ようとしたが

入口近くにあった
REAL DESIGN
という雑誌が目にとまり
これも買うことにした

また同じレジにこの雑誌を
もって会計を済ませよう
とすると

コンビニのおばさんが
先ほどかったお茶を
もう一度POSにかけようと
した

そして
シールを見てすでに今しがた
清算が終わっていることに
はっと気がついて
恥ずかしそうに
僕にこういった


あら いやねー

最近は商品とお金だけ
見て
お客様の顔さえ
見ることがなくなったの
本当に
ごめんなさいね

その時 この人は
僕の顔を始めて
見つめた

バイトではなく
明らかに
フランチャイズの
オーナーさんだ

この店は以前は たぶん
酒屋さんだったのだろう
10年も前は
お客さんと雑談をしながら
人と人と
商売をしていた

そんな光景が僕の目の
前に 広がっていった


商品とお金だけ見て
人を見なくなった


この言葉が
僕の頭の中で
ぐるぐるぐるぐると
回り続けた









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