天の海に雲の波立ち
月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ

- 柿本人麻呂


この歌に出会った時、
私は物理学の大学院にいた。
小学校五年生の時、
天才物理学者アインシュタインの
伝記を読んだ。

それで、将来は時空の概念を
革命するのだと決めてしまった。

科学をやるということは、
つまりグローバリズムの嵐に
身をさらすということである。
青年の頃は生意気だったから、
日本の文化など捨ててしまえ、
と嘯いていた。

これからは、全部英語でやるんだ
と思った。
洋書を読んでいる方が
、 何となく高級な感じがした。
そんな時に、不意打ちのように
万葉集のこの歌が目の前に現れた。

教えてくれたのは、
源氏物語を研究している
若い学者さん。彼女が
「万葉集にはこんな歌があるんだけども」
とさらさらと記したその文字列に、
私は釘付けとなった。





   - 茂木健一郎




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個人時間
家族時間
会社時間
社会時間
地球時間
宇宙時間

いろいろな時間を
僕たちは自分の中に
持っている

古人が考えた
思考
感じた
感情は

一度宇宙に向かって
放たれ
何年、何十年
何百年、何千年という
時間を経て

また
地球に戻ってくる

その
エネルギーを
僕たちは
インスピレーションとして
感じる

そのエネルギーと
自分自身が
つながった瞬間に

時間という
概念が

なくなって
しまう










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