いにしへの

奈良の都の

八重桜

けふ九重に

にほひぬるかな

(伊勢大輔)



小倉百人一首にも

納められている歌である

九重は宮中の意

昔の奈良の都で咲いていた

八重桜が

今日は宮中で

咲いていることだ


奈良の八重桜が

京都の宮中に献上された際

即興的に

読まれた歌である




-- 小澤實 



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卒業、入学
移動、入社
4月は
始まりと終わり
そして変化の
季節である

そのような季節を
祝福するかの
ように桜が咲く

まるで
いたずらっ子が
物陰に隠れて
わっ と
大人を驚かす
ように

一気に咲き

そして

一気に散る

電車や車の中から
外の風景を
眺めていると

山奥や
街から離れた
川辺の土手沿い
にも桜並木が
あり

そこでは
人に見られようが
見られまいが
おかまいなしに
咲き誇っている

僕はそんな桜を
見るたびに
自分一人がその
桜並木の下で
ゆっくりと
好きなお酒を
飲んでいる姿を
妄想してしまうのだ









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